輸送のスペシャリストに聞きました

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すずき むつみ▶工業高校卒業後、工作機械による加工技術の仕事につく。大好きな自動車関連の仕事が諦められず、5年前に株式会社トランスウェブに転職。お客様対応はもちろん、高級車の運搬テクニックには定評がある。

高級車の運送における
最上級の取り扱い、最高級の輸送品質を

「輸送プラスα」の価値を追求

―株式会社トランスウェブさんでの鈴木さんの仕事内容から教えてください。

 高級車をお持ちのお客様の大切なお車を、安全・確実に輸送するのが仕事です。そのために、常に運送のための最新技術や知識を研究し、輸送品質向上のための努力を続けております。目に見える品質だけにとどまらず、お客様に感動を添えてお届けすることがモットーです。会社からも常日頃から、「輸送プラスα」の価値を追求するように指導を受けています。
 私が取り組む「チャーター」と言う仕事は、お客様個人からご依頼を受けまして、お客様の自動車を修理や点検のため、または販売のためにディーラーに運び、反対にディーラーから仕上がった車を、お客様ご指定の場所までお届けしています。

―トラックやトレーラーは白が基調ですね。

 お客様のブランドイメージを損なわないよう、すべてのトランスポーター(トラックやトレーラー等の運搬装置)は白一色に統一されています。私たちは積載時には白い手袋を着用し、お車のシートに座る際にはシートカバー装着をして乗車するなど、大切なお車を汚さないよう細心の配慮も忘れません。
 会社全体としましては、「ニュービークル」と言いまして、現在、複数の自動車メーカーと契約し、海外から船便で来日した輸入車両を、港から全国各地へ運搬する新車輸送も行っております。また輸入車と出荷前点検をワンパッケージにした「PDI」、レーシングチームと契約して、レースマシンや周辺機材等を運搬する「モータースポーツ」、コンサート関連の機材や什器などを運搬する「イベントサポート」、その他「エアカーゴ事業」、「コンテナ事業」等を展開しています。

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数億円に達する高級外車も

―この仕事につかれたきっかけは。

 工業高校を卒業しまして、工作機械を使って部品や商品を製造する仕事をしていました。ですがもともと体を使った仕事が好きだったのと、昔から大好きだった自動車関係の仕事が諦められず、しかも普段あまり目にすることのない高級車に携われる仕事を勧めていただいたこともあり、5年前に転職しました。

―鈴木さんはどのようなトランスポーターを運転しているのですか。

 私は現在、個人のお客様担当ですので、4t(トン)トラックに1台積んで運送をしています。北は北海道・網走、南は九州・鹿児島にお客様がいらっしゃいますので、ご依頼があれば日本全国、どこへでも参ります。

―高級車の運搬ということですが、運搬には気苦労が多いのではないでしょうか。

 私が運搬する自動車の価格帯は、数百万円から中には数億円に達する高級外車もあります。もちろん緊張感を持って仕事に臨むのは当然ですが、私たちはどのようなお車でも、常に最上級の取り扱いで最高級の輸送品質を心がけておりますので、自動車の価格帯は特に気にしたことはありません。
 どのような仕事も同じだと思いますが、お客様に接客する際のご挨拶、これだけは第一に考えています。引取りや納車時にはお客様と直接電話でお話することもあります。電話の応対や言葉遣いには特に注意をしています。

―運搬にあたって、技術面でのご苦労を教えてください。

 私の場合ですと、まずトラックに車が上がる用のハシゴをかけ、そこを上がって行くのですが、その際にぶつけたり擦ったりしては大変です。普段、窓からできるだけ上半身を出して目視しながら運転しています。フェラーリやランボルギーニなど多くの車はタイヤを見ればスムーズに載せることができますが、マクラーレンという車は、運転席からタイヤがまったく見えないので苦労します。また右ハンドルでマニュアルミッションの輸入車は、クラッチを足で操作しますので、外が見えにくくなります。そういう車の場合はボディが他に接触しないかなど、何度でも確かめに車を降ります。
 以前、新宿の歩行者天国でイベントがありまして、私が高級外車をトラックに載せようとしましたら、多くのギャラリーが集まってきました。珍しい高級車でしたから、トラックを取り囲んで写真や動画を撮影したりされたことがありました。あの時は変な汗をかいたのを覚えています。後日、その模様がYouTubeにアップされていました (笑)。

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お客様からの感謝の気持ちがやりがい

―高級車の運搬もさることながら、トラックの運転そのものも大変ですね。

 運転そのものが大好きですので、運転は苦になりませんが、「無事故」「無違反」は絶対継続させていくつもりです。確かに遠方まで出かけた場合は、トラックで車中泊をすることになります。そういう時は特に無理をせず、日頃よりさらに安全運転に気をつけています。

―最近では「若者の自動車離れ」などということも聞きますが。

 私たちの時代は、車に対する憧れは強かったですね。私も物心つく前から自動車が大好きでした。弊社では、先程も言いましたように「モータースポーツ」という事業も行っております。これまでスーパーGTやスーパーフォーミュラをはじめ、数多くの実績を重ねてきました。この事業は、マシン輸送だけでなく、メカニックの皆さんが使用する専用工具や戦略上必要不可欠なPC関連機材の運搬も行います。常にレースやチームについて勉強し、単なる輸送要員の枠を越えて、レースウィークには期間中滞在して、チームメンバーの一員として共にレースを戦います。
 自動車に興味を持たない子はいるでしょうが、さまざまな角度から自動車に携わるのも楽しいことだと思います。
 トランスウェブでは、業務内容ごとに詳細なマニュアル作りに取り組んでいます。読むだけではなく実践訓練も行うことで、誰もが安全に作業を進めることができるようになっています。

―今の仕事についてメッセージをお願いします。

 私の場合、体を動かす仕事につこうという選択は間違いではなかったです。今日までいろいろな経験を積んできましたが、間違った選択肢はありませんでした。高級車の運送に携わりながら、さまざまなタイプのお客様と接することもでき、自身の成長にとても役立っていると思います。
 そして最後にお客様から「ありがとう」という言葉をかけていただいた時に、この仕事をやっていて良かったと感じます。
 現在進路で悩んでいる高校生もいるかと思いますが、「目の前の」、「近くにある」選択肢ばかりに目を向けるのではなく、もっと時間をかけて、視野を広げて自分の選択肢を見極めてください。

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運送の仕事をめざす高校生へのメッセージ

経験、知識を今のうちに!
私が進路決定をした時代には、パソコンも今ほど充実しておらず、ましてスマホなどなく紙の情報が頼りでした。そうした点では今の高校生は恵まれています。いろいろ勉強し、知識を身につけて、ありとあらゆる経験を積んでみてください。そこから自分に合った道が見えてくるはずです。

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