ギターリペアのスペシャリストに聞きました

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こいで のぞみ▶1996年神奈川県出身。神奈川県立藤沢清流高等学校からESPギタークラフト・アカデミー(GCA)東京御茶ノ水校へ進学。在学中は新聞奨学生として仕事と学校を両立させる。学内ギター作品コンテストで3年次グランプリ、4年次準グランプリ受賞。2019年3月卒業し㈱イー・エス・ピー入社。おもにエレキギターの修理を請け負うリペアマンとしてキャリアスタート。

リペアマンは“ギターのお医者さん”
手に職がつき 人に感謝される仕事

壊したギターを自力で修理
ギタークラフトに関心をよせ専門校へ進学

 高校では軽音楽部でバンド活動をしていましたが、音楽よりも「ギター」という楽器に興味がありました。高1のときに自分のエレキギターを壊してしまい、自力で修理して構造などに関心を持ったのが、今の仕事の原点だったように思います。当時からリアリストだったので、「手に職をつけてご飯が食べられるようになる」ことを念頭に、将来の職業や進学先を選びました。
 私にとってギターを作る仕事は、美容師や医師と同じ技術職だと認識していたので、「卒業後はギターを作る学校へ行きたい」という希望を持ち、インターネットで調べてESPに辿りつきました。ESPは国産ギターメーカーとして歴史もあり、自社工場や学校のほか世界中で販売展開しています。東京のESPスクールはお茶ノ水と高田馬場の2校がありますが、楽器の街・お茶の水の雰囲気に惹かれ、GCA(ギタークラフト・アカデミー)へ進学しました。高校の先生には「ミュージシャンになるのか」と勘違いされてしまいましたが、手に職をつけるための進学であることを理解してもらいました。

毎朝2時半起き 仕事と両立の学校生活を貫徹

 進学を機に上京し、新聞奨学生として学校近くの寮に住み込みで働きながら通学しました。毎朝2時半に起床して朝刊を配達し、仮眠をとって9時半にGCAへ通学。午後は帰宅してから夕刊の準備と配達、夕食のあと夜9時には寝る生活を3年間続けました。厳しい環境に身を置き、学校生活と仕事を両立できたことで「どこに行っても大丈夫」という自信になったと思います。
 GCAは実践主義の学校で、1,2年生では座学と実技基礎を徹底して教わり、3年生からは100%実技を学びます。自分で目標をたててその到達度で卒業できる、フレキシブルなカリキュラムも魅力がありました。先生方に教わったことで印象に残っているのは、修理をする前の観察とアプローチ方法、作業の段取りの大切さです。「よくみる」ことで多くの気づきを得て、修理までの最短アプローチを見つけ出すことができるからです。また、学内の創作ギターコンテストに出品し、3年生でグランプリ、4年生で準グランプリを受賞しました。デザイン・仕様からパーツのチョイスまで、学生のできることを全力で注ぎ込んだ作品です。毎日ギターのことばかり考えていた学校生活は、本当に充実していました。

お金をもらったら新人でも“プロ”
日本一の環境で理想の仕事をスタート

 3年生の終わりごろ、ESPが新世代リペアマンを育てることになり、私に声をかけていただいたのが当社に就職するきっかけでした。競合にはない圧倒的なパワーをもつESPが、技術者として自分を育ててくれる―本当にうれしいことでした。
 4年生の1年間はアルバイトとして店舗で働き、卒業後の2019年4月に入社しました。工場研修等を経て、お茶の水駅前店でリペア受付や修理を担当しています。お客様に近いところで技術の仕事をしたいという希望も叶い、自分のやりたい、理想の場所に来たという実感があります。
 ギターの故障は、まったく同じということがありません。原因が1ヵ所のときも、複合的なダメージが全体に及ぼすケースもあります。突き止めるにはよく観察して、その原因を考えることが大切です。経験が重んじられる仕事ですが、当社は全国に熟練の先輩リペアマンが在籍し、いつでも相談することができます。いざとなれば母校の先生方も近くにいるので、技術を磨くにはこれ以上ない環境だと思います。お客様からお金をもらっている以上は新人でもプロである、という意識をもって日々仕事に取り組んでいます。
 今後の目標は「なんでも直せる人」になりたいです。技術者としての高みを常にめざして、将来的にはESPギターの製品を作り、母校の先生になれるまでの技術力をつけたいと思います。

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リペアマンをめざす高校生へのメッセージ

世代交代で若手を育ててくれる またとない時期
興味があることをそのままにしないで、貪欲に取り組んでみると、その中から将来の仕事が見つかるかもしれません。道に迷わず、まずは興味あることにハマってみよう。
同級生の多くが製造の仕事につきましたが、ギターリペアの技術者は世代交代の時期で、当社でも若い人が少ないのが現状です。今は育ててくれる環境に恵まれています。

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